ジュエリーの3Dプリントは何を作る?光造形原型と金属造形の違い
「3Dプリンターでジュエリーを作る」と聞くと、金属の指輪がそのまま出てくる姿を想像するかもしれません。実際に多いのは、3Dプリンターで樹脂の原型を作り、鋳造で金属に置き換える方法です。
原型は耐火性の埋没材に埋めて焼き飛ばします。残った空洞に溶けた金属を流し込みます。
金属を直接造形する方式もありますが、得意な形と注意点が違います。GEMILYAは前者の方法で製作しており、金属の直接造形には対応していません。
先に結論:ジュエリーで多いのは「原型を3Dプリント→鋳造」
ジュエリーの3Dプリントは、多くの場合「形を作る」ための工程です。金属の完成品は、そのあとの鋳造と仕上げで生まれます。
この方法が広く使われている理由は、主に次の3つです。
- 鋳造に使われる地金(シルバー925やK18など)で仕上げられる
- 研磨・いぶし・メッキ・石留めといった、従来の仕上げがそのまま使える
- 同じ形を複数作るときは、ゴム型でワックスを複製する方法もとれる
一方で金属を直接造形する方式は、内部に空洞や網目があるなど、鋳造の工程で扱いにくい形で検討されることが多い方式です。
ただし、鋳造側の制約は1つではありません。次の2つに分けて考えます。
- ゴム型でワックスを複製する場合:ワックスを型から抜き出せる形か
- 3Dプリント原型をそのまま鋳造する場合:鋳造後に内部の埋没材を取り除けるか
空洞や網目があるだけで、どちらの方式が向くかは決まりません。作りたい形と素材で、向き不向きが分かれます。
2つの方式の違い
金属の直接造形には、いくつかの方式があります。この表では、金属粉末を熱で溶かして層ごとに固める方式と比べます。
| 項目 | ①原型を造形して鋳造 | ②金属を直接造形 |
|---|---|---|
| 3Dプリンターで作るもの | 樹脂やワックスの原型 | 金属の部品そのもの |
| 金属になる工程 | ロストワックス鋳造 | 金属粉末を熱で溶かし、層ごとに固める |
| 素材 | 鋳造に使われる地金から選ぶ | 装置が扱える金属粉末に限られる |
| 表面 | 積層の跡や鋳肌(鋳造直後のざらつき)を研磨で整える | 粉末の粒感が残りやすく、研磨が前提になる |
| 支え(サポート) | 樹脂の支えを外し、跡を整える | 金属の支えを切断し、跡を削る |
| 得意な形 | リング・ペンダント・チャームなど一般的な形 | 埋没材やワックスを抜きにくい内部の空洞・網目 |
| 形の注意点 | 閉じた中空は一体では鋳造しにくく、開口部や部品分けを検討 | 閉じた空洞は粉末が残るため抜き穴が要る |
| GEMILYAの対応 | 対応 | 非対応 |
表は一般的な傾向です。実際の仕上がりは、装置・素材・形・後加工によって変わります。
GEMILYAで選べる地金は、シルバー925・K18・K10・Pt900・真鍮です(Pt950は要相談)。ステンレスやチタンは本体の鋳造に対応しておらず、ピアスポストなどの既製部品としてのみ使えます。
よくある誤解が、金属を直接造形すれば仕上げが要らないという思い込みです。どちらの方式でも、支えの除去や研磨などの後加工は必要になります。
光造形の原型から完成までの流れ
光造形は、光を当てると固まる液体の樹脂を、薄い層ごとに固めて形を作る方式です。ジュエリーでは、焼いたときに燃え残りにくい鋳造向けの樹脂で原型を出力します。
- 3D CADで形のデータを作る
- 光造形で原型を出力し、支えを外して表面を整える
- 原型に湯道(金属の通り道)を付け、地金や鋳造条件に合った埋没材(鋳型を作る耐火材料)に埋める
- 窯で焼いて原型を燃やし、型の中を空洞にする
- 溶かした地金を流し込み、冷えてから鋳型を壊して取り出す
- 湯道を切り、バリ取り・研磨・メッキ・石留めで仕上げる
- 寸法や表面を検品する
鋳造は複数個まとめて行えても、仕上げと検品は1個ずつの作業です。工程の詳しい中身はロストワックス鋳造の解説にまとめています。
データの作り方はジュエリー3DCAD入門を、ご相談から納品までの段取りは制作の流れをご覧ください。手元に現物しかない場合は、3Dスキャンでデータ化してから同じ流れに乗せる方法もあります。
3Dプリント原型で気をつける形
画面の上ではどんな形でも描けます。ただし、原型・鋳造・着用のそれぞれに限界があります。
細さ:3つの段階で壊れやすさを見る
細い部分は、次のどこかで問題が出やすくなります。
- 原型の出力中や、支えを外すときに折れる
- 鋳造で金属が先端まで流れ込まない
- 完成後、着用中に曲がる・欠ける
原型が出力できても、金属にして使えるとは限りません。必要な太さは素材や大きさで変わるため、細い爪やワイヤー状の形は入稿前に相談すると安全です。
支え跡:付ける面を決めておく
光造形では、造形中に形を支える細い柱(サポート)を付けます。外したあとには小さな跡が残り、研磨で整えます。
支え跡が石座の内側や細かい彫りに付くと、整えにくくなります。裏側など跡が目立たない面を伝えておくと、仕上がりが安定します。
表面:層の段差と研磨の届き方
原型の表面には、層を重ねた細かい段差(積層痕)が出ることがあります。なだらかな曲面ほど、縞のように見えやすい傾向があります。
鏡面仕上げは段差が映り込みやすいため、原型の段階で整えておくことが大切です。細かい彫りの奥は研磨の道具が届きにくく、跡が残りやすくなります。
| 形 | 起きやすいこと | 対策の方向 |
|---|---|---|
| 細い爪・ワイヤー状の線 | 原型の破損、金属が行き渡らない | 太さを持たせる、長さを短くする |
| 薄く広い板 | 原型や鋳造品の反り | 厚みをそろえる、裏に補強を入れる |
| 小さな文字・浅い彫り | 研磨で輪郭がぼやける | 文字を大きく、彫りを深めにする |
| 閉じた中空 | 内部の埋没材を取り除けず、一体では鋳造しにくい | 中を詰める、開口部を設ける、部品を分けて接合する |
閉じた中空の形は、そのまま一体で鋳造できるとは限りません。開口部の位置や部品の分け方を含めて、形を決める段階でご相談ください。
データを用意するときの確認事項
GEMILYAで受け付けている入稿形式は、.3dm / .stl / .igs / .stp です。形式が合っていても、中身によっては修正が必要になります。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 単位と実寸 | mm単位で、完成品の大きさになっているか |
| 閉じた立体か | 金属になる部分が、面の抜けや不正な重なりのない閉じた立体か |
| 肉厚 | 細い部分が原型・鋳造・着用に耐える厚みか |
| サイズ | リングの号数や、バチカンにチェーンが通るか |
| 石 | 石の寸法と留め方が決まっているか |
| 仕上げ | 面ごとに鏡面・マットなどの指定があるか |
| 支えを付けてよい面 | 跡が残っても目立たない面を示せるか |
ここでいう「閉じた立体」は、データの面がすき間なくつながっているかの確認です。裏抜きや貫通穴がある形でも、面が正しく閉じていれば問題ありません。
よくある失敗は、書き出しの単位がずれて、極端に大きい・小さいデータになるケースです。主要な寸法を数値で添えると、受け取った側でずれに気づけます。
画面では拡大して見るため、細部が実物より大きく感じられます。手持ちの近い商品を測り、実寸と比べてから決めると失敗が減ります。
また、鋳造では金属が冷えるときにわずかに縮みます。リングの内径など寸法が大切な箇所は、データの段階で伝えておきます。
寸法・石・仕上げの指定は、発注仕様シートにまとめておくと伝え漏れを防げます。
Blenderなどで自作したデータの注意点は自作3Dデータの鋳造にまとめています。データがまだない場合も、スケッチや参考画像から3D CADの製作をご相談いただけます。
まとめ
- ジュエリーの3Dプリントは、多くが鋳造のための原型づくり
- 金属の直接造形は、埋没材やワックスを抜きにくい形で検討されることが多い
- どちらの方式も、支えの除去や研磨などの後加工が必要
- 原型の細さ・支え跡・積層痕・閉じた中空は、形を決める段階で確認する
- データは形式に加え、単位・閉じた立体・肉厚・支えの面を確かめる
GEMILYAは、3D CADから光造形の原型を作り、鋳造・仕上げまで行う方法で製作しています。お手元のデータで鋳造できるかの確認から、無料相談で承ります。