OEMの追加生産・再発注の基礎|型の再利用と利益率の変化
OEMの追加生産(再発注)では、既存の原型やゴム型を再利用できれば、初回にかかった型代や試作費を抑えられます。
ただし1個あたりの単価や利益率は、再発注の数量・地金相場・工程・販売価格でも変わります。条件によっては、初回より単価が上がることもあります。
再発注で確認したいのは「型が使える状態か」「前回と同じ仕様を再現できるか」「何個作るか」の3点です。
追加生産で費用構造が変わる理由
OEMの費用は、大きく「初回だけ発生しやすいもの」と「毎回発生するもの」に分かれます。
| 費用項目 | 初回 | 追加時 |
|---|---|---|
| 原型・ゴム型代 | 発生 | 保管した型を再利用できれば省略可 |
| CADデータ・試作費 | 発生 | 同一仕様なら原則省略可 |
| ゴム型の作り直し | — | 劣化していれば発生しうる |
| 材料費・加工費・仕上げ費 | 発生 | 毎回発生 |
表の「省略可」は、原型・型・データが保管されていて、同一仕様で再利用できる場合の話です。ゴム型は消耗品なので、劣化していれば原型から作り直す費用がかかります。
初期費用の負担が抜ければ、1個あたりのコストは下がる傾向があります。一方で、次のような場合は初回より単価が上がることがあります。
- 再発注の数量が初回より少ない
- 地金相場が初回の見積もり時より上がっている
- ゴム型が劣化していて、作り直しが必要になる
- メッキや石留めなど、工程を一部変えた
具体的な金額は素材やロットで大きく変わります。費用の内訳の考え方はOEM費用の記事と料金の考え方を参考にしてください。
型の再利用はどういう仕組み?
ジュエリーの量産で使われるロストワックス鋳造では、原型から「ゴム型」を作ります。
このゴム型が、追加生産のカギです。
- ゴム型があれば、同じ形のワックス(ろうの原型)を繰り返し複製できる
- 焼き増しできる「写真のネガ」のような存在で、型が使える状態なら2回目以降は型作りを省略できる
- ただしゴム型は消耗品で、使用や経年で劣化すれば原型から作り直す
- 原型がない場合は、CADデータから原型を再製作し、そこからゴム型を作り直す方法がある
CADデータから作り直す場合は、原型の再製作とゴム型の製作それぞれに費用と日数がかかります。各工程の費用と納期を確認してから進めましょう。
型やデータを誰がどのくらいの期間保管するかは、製作会社によって扱いが異なります。初回の発注時に確認しておくと、追加生産で慌てずに済みます。
GEMILYAでは、原型を最終発注から6か月保管し、処分前にご連絡します(希望があれば返却)。ゴム型の扱いを含む条件は品質と進め方・取引条件で確認できます。
仕様を変えたい場合は「追加」と扱いが変わる
「サイズ展開を1つ増やしたい」「石の色だけ変えたい」という場合もあるでしょう。
変更の内容によっては型の修正や新しい型が必要になり、初期費用が再び発生することがあります。どこまでが既存の型で対応できるかは、変更案を添えて早めに相談するのが確実です。
再発注で失敗しないための注意点
「同じものをもう一度」は、簡単なようで意外と落とし穴があります。次の4点を押さえましょう。
| 注意点 | やること |
|---|---|
| 仕様を文書で固定する | 品番に加え、版番号・承認日・寸法・素材・仕上げ・メッキ・石・部品仕様を記録する |
| 見積もりを取り直す | 地金相場の変動で、同じ仕様でも金額が変わる前提で依頼する |
| 基準品を双方で合意する | 初回の量産品から基準品を決め、色や仕上がりの照合に使う |
| 納期を確認する | 型の状態と製作内容をふまえて、再発注のたびに確認する |
とくに仕様の記録は重要です。「前回と同じで」という口頭のやり取りだけでは、細部の認識ずれが起きやすくなります。
記録は「RING-01・版2・承認日・号数・シルバー925・鏡面・ロジウムメッキ」のような形にします。版番号があると、サイズや石を変えた後も、どの版で作るかを取り違えにくくなります。
前回の仕様は発注仕様シートの形でまとめておくと、そのまま再発注の依頼に使えます。
基準品は、発注者と製作側のどちらが持つか、何を基準に照合するかを合意しておきます。保管中に変色や擦れが出ることもあるため、初回納品時の写真もあわせて残しておくと安心です。
また、チェーンや金具、石などの部品は、時間が経つと同じものが手に入らない場合があります。長く売る定番品ほど、代替部品の可否も含めて早めに相談しておくと安心です。
当社の製作目安は仕様確定後およそ4週間です。原型・ゴム型の状態や製作内容を確認したうえで、再発注時にも納期をご案内します。
納期の逆算方法は、OEMの納期の記事で詳しく解説しています。
在庫との付き合い方
追加生産をうまく使うと、在庫リスクを抑えたブランド運営ができます。基本の考え方は次のとおりです。
- 初回は小さく作り、売れ行きを確かめてから追加する
- 発注数量は「再製作期間中に売れる見込み+余裕分」を目安にする
- 手元在庫だけでなく、発注済みで未納品の数量も含めて判断する
- 追加はすべての商品ではなく、売れ筋に絞る
- 繰り返し作る定番品と、売り切りの限定品を分けて考える
発注の時期は、手元在庫が「再製作にかかる期間の販売見込み」を下回る前が目安です。型の作り直しが必要になると日数が延びるため、その分も見込んでおきます。
数量に迷ったら、希望する3つの数量で見積もりを並べて比べると、単価と在庫のバランスを判断しやすくなります。
一度に大きく作れば単価は下がりますが、売れ残れば在庫が資金を圧迫します。型を活かして必要な分ずつ追加する方法は、単価と在庫リスクのバランスを取る現実的な方法です。
売れる商品が定まってきたら、その商品だけロットを増やして単価を下げる、という段階的な育て方もできます。少数の追加は1個からの小ロット、100個・300個・1000個といったまとまった数量は量産の案内を参考にしてください。
まとめ
- 同一仕様で原型・型を再利用できれば初期費用を抑えられるが、単価は数量や相場でも変わる
- ゴム型は消耗品で、劣化していれば原型から作り直す費用が発生しうる
- 当社の原型は最終発注から6か月保管。間隔が空きそうな定番品は保管条件を先に確認する
- 再発注は版番号付きの仕様記録・見積もりの取り直し・合意した基準品との照合が失敗防止のカギ
- 発注数量は再製作期間中の販売見込み+余裕分を目安に、3つの数量の見積もりで比べる