アクセサリーOEM契約の注意点|支払い・キャンセル・原型の保管
アクセサリーOEMで後から揉めやすいのは、金額そのものより「いつ払うか」「やめたらいくらかかるか」「型はいつまで残るか」です。見積もりに合意する前に、この3つに権利と納期を加えた5項目を書面で確かめます。
口頭の約束は、担当者が変わると残りません。メールや見積書の備考など、あとで見返せる形で受け取ります。
契約書の条文が法的に妥当かの判断は、弁護士などの専門家にご相談ください。ここでは、依頼する側が何を質問し、何を書き留めるかを扱います。
先に結論:発注前に書面で確かめる5項目
表の左の項目を順に質問していくと、発注後の行き違いを減らせます。
| 確認項目 | 質問の例 | 確認できたら書き留めること |
|---|---|---|
| 支払い | いつ、どの方法で払いますか | 支払いの回数・各回の時期・振込か請求書か |
| キャンセル | どの段階から費用がかかりますか | 無料で取り消せる期限・費用の範囲・完成品の照合基準 |
| 原型・型 | 型やデータはいつまで保管され、受け取れますか | 保管期間の起点・返却の可否・データの受け取りと他社での利用 |
| 権利 | ロゴや他社デザインを含む場合、何が必要ですか | 誰のデザインか・許諾の有無と範囲 |
| 納期 | 納期はどの日から数えますか | 起算日・含まれない期間・変更時の数え方 |
書き留めるときは、期間の長さだけでなく起点の日まで残します。「6か月保管」とだけ控えると、発注日からか納品日からかで処分の時期が変わります。
見積もりを依頼する前の準備は、見積もり依頼の準備チェックリストにまとめています。この記事は、その次の段階で行う確認です。
支払いの時期と方法
OEMの支払い方は、主に「発注時に全額」「着手金と残金の2回」「納品後に請求」の3つです。初めての取引では、前払いを求める事業者も珍しくありません。
確認しておきたいのは次の点です。
- 支払いの回数と、各回の時期(発注時・納品前・納品後)
- 請求書や領収書を発行してもらえるか
- 振込手数料をどちらが負担するか
- 地金相場が動いたとき、請求額が変わる条件はあるか
当社の場合、初回のお取引は発注時に全額前払いです(銀行振込・請求書発行)。金額が大きい場合は、着手金と納品前の残金の2回に分けることもできます。
稟議や経費精算が必要な方は、支払い時期を先に社内へ伝えておきます。前払いの請求書が出てから承認を待つと、その分だけ着手が遅れます。
よくある失敗は、納品後の支払いを前提に予算を組んでしまうことです。グッズ担当の方は、イベント前に支払いが来る前提で資金の流れを確かめておくと安心です。
キャンセルと費用が発生する時点
キャンセル費用は「発注後ならいくら」と一律ではありません。工程がどこまで進んだかで決まるのが一般的です。
原型(製品の元になる形)の製作が始まると、その作業分は元に戻せません。そのため、次の段階ごとに扱いを聞いておきます。
| 段階 | 状態 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 見積もり承認前 | 仕様と金額を検討中 | 取り消しに費用がかかるか |
| 承認後・原型着手前 | 作業の開始を待っている | 無料で取り消せる期限 |
| 原型・型の着手後 | 設計・原型・試作の作業が進行中 | どこまでの費用を払うか |
| 本生産の開始後 | 試作を確認し、発注数の鋳造・仕上げに入った | そもそも取り消せるか |
試作(仕上がりを確かめる1個)と、そのあとの発注数の製作は、分けて扱いを聞きます。1個の特注(一点もの)では両者が分かれないこともあるため、どこから取り消せなくなるかを個別に確かめます。
当社では、見積もり承認前のキャンセルは無料です。承認後でも、原型に着手する前なら原則無料です。
原型・型に着手した後は、その時点までの費用をいただきます。量産(発注数の製作)に入った後はキャンセルできず、完成後の返品もお受けしていません。不具合があった場合はご相談ください。
返品が難しい取引では、完成品を何と照らし合わせるかを発注前に決めておきます。確認したいのは次の点です。
- 照合の基準にする承認見本・仕様書・図面はどれか
- 納品時に見る項目(サイズ・色味・メッキの色・石の位置など)
- 不具合に気づいたときの連絡方法と、送る資料(写真・届いた状態・数量)
連絡の期限や対応の内容は、事業者によって異なります。受け取った条件は、仕様書と一緒に保管しておきます。
よくある失敗は、仕様変更をキャンセルとは別の話だと考えることです。原型ができてから形を大きく変えると、作り直しの費用がかかることがあります。
社内での確認は、原型に着手する前に済ませておきます。取引条件の全体は品質と進め方に載せています。
原型・型の保管と返却
ゴム型は、原型から取ってワックスの複製を作るための型です。追加生産のしやすさは、原型とゴム型が残っているかで大きく変わります。
保管について聞いておくことは次のとおりです。
- 保管期間と、その起点(発注日・納品日・最終発注日など)
- 期間が切れる前に連絡をもらえるか
- 希望すれば原型を返却してもらえるか、送料はどちらの負担か
- ゴム型が傷んだとき、作り直しの費用はどうなるか
当社では、原型を最終発注から6か月保管します。処分する前にご連絡し、ご希望があれば返却します。
ゴム型は使うほど傷んでいく消耗品です。劣化したら原型から作り直すため、再発注の時期によっては費用がかかります。
原型の保管・返却と、データの受け取りは別の確認です。返却の約束があっても、3D CADデータを受け取れるとは限りません。
- 原型や3D CADデータを、納品物として受け取れるか
- 受け取れる場合、ファイル形式と引き渡しの時期はいつか
- 受け取った原型やデータを、他社での再製作に使ってよいか
将来ほかの依頼先へ移る可能性があれば、この3点を最初に聞いておきます。移るときの確認事項は、依頼先を変えるときの確認事項で扱っています。
よくある失敗は、連絡先を個人のメールアドレスにしていたケースです。担当者が異動すると、処分前の連絡に誰も気づけません。部署で共有しているアドレスを登録しておくと安全です。
再発注の進め方は、追加生産・再発注の基礎で詳しく扱っています。
デザインと権利の確認
発注前に確かめるのは、そのデザインを製品にしてよい状態かどうかです。自分で描いたデザインでも、ロゴやキャラクター、他社の商標が入っていれば許諾の確認が要ります。
- デザインは自分(自社)で作ったものか、外部のデザイナーが作ったものか
- ロゴ・キャラクター・他社商標が入っているか
- 許諾がある場合、使える品目・数量・期間はどこまでか
- 外部デザイナーとの間で、製品化に使うことを取り決めているか
当社で複製や改変をお受けするのは、依頼者が権利を持つ製品・デザインか、権利者の許諾があるものに限ります。許諾を示すメールや書面は、発注前に手元へそろえておきます。
権利の考え方は、アクセサリーデザインの権利の基礎にまとめています。権利があるか、どこまで使えるかの判断は、弁理士・弁護士にご相談ください。
納期の起算点と変更時の扱い
同じ「4週間」でも、どの日から数えるかで届く日は変わります。起算点は、発注日・入金日・仕様確定日のいずれかになることが多いです。
当社の目安は、仕様確定後およそ4週間です。デザインの検討や社内承認にかかる期間は含みません。数量、石留め、メッキ、修正の回数、連休によって前後します。
| 聞くこと | 書き留めること |
|---|---|
| 何をもって仕様確定とするか | 確定を伝える方法と、その日付 |
| 入金と着手の順番 | 入金を確認してから着手するか |
| 途中で仕様を変えたとき | 変更後の納期の数え方 |
| 連休を挟むとき | 休業期間と、納期への影響 |
発売日やイベントの日付は、最初の相談で伝えます。間に合わない工程が、仕様を確定する前に見つかりやすくなります。
よくある失敗は、修正を重ねるうちに納品予定日が後ろへずれていくのに気づかないことです。修正を依頼するたびに、予定日を聞き直しておきます。
まとめ
- 支払い・キャンセル・原型の保管・権利・納期の5項目は、見積もりに合意する前に書面で確かめる
- キャンセル費用は工程の進み具合で決まるので、試作と本生産を分けて、無料で取り消せる期限を控える
- 完成品の照合基準と、不具合時の連絡方法・送る資料を発注前に決めておく
- 原型の保管期間は起点の日まで書き留め、データの受け取りと他社での利用は別に確かめる
- ロゴや他社デザインを含む場合は許諾の範囲をそろえ、納期は起算点と変更時の数え方をセットで聞く
条件の読み方に迷うところがあれば、見積もりの前でも無料相談でお尋ねください。