ジュエリー3D CADの肉厚設計|鋳造できるデータの考え方
3D CADで美しい形ができても、そのまま金属へ置き換えられるとは限りません。画面では成立している薄い面や細い線が、造形、鋳造、研磨、使用の工程で問題になることがあります。
大切なのは、万能な最小寸法を探すことではありません。素材と形状、使い方、仕上げを合わせて、製造できる肉厚を考えることです。
肉厚に一つの正解はない
必要な厚みは、商品の条件によって変わります。数字だけを切り離さず、どこに、どの方向から力がかかるかを確認します。
| 条件 | 肉厚へ影響する理由 |
|---|---|
| 素材 | 硬さや加工時の挙動が異なる |
| 商品の大きさ | 同じ厚みでもたわみ方が変わる |
| 形状 | 平面・曲面・補強の有無で変わる |
| 使用方法 | 接触や繰り返し荷重が異なる |
| 仕上げ | 研磨で表面が削られる |
たとえば飾って見る造形物と、毎日着けるリングでは必要な考え方が違います。リングでも、全周が同じ太さの形と、途中で急に細くなる形では力の集中する場所が変わります。
データを入稿するときは、対応形式も確認してください。ジュエリーCAD入稿形式の解説で準備方法を整理しています。
画面表示と実寸を分けて確認する
CAD画面では自由に拡大できるため、実物では見えない細部も大きく表示されます。必ずミリ単位の実寸へ戻して判断します。
- 商品全体を原寸表示または実寸図で確認する
- 最も薄い面と最も細い線を測る
- 急に厚みが変わる場所を探す
- 左右対称なら両側の数値を比べる
- 意図しない尖りやゼロに近い面がないか見る
- 研磨後に残したい模様の深さを確認する
レンダリング画像は完成イメージの共有には役立ちますが、寸法確認の代わりにはなりません。主要寸法がわかる図やデータを一緒に渡すと、製作側が意図を読み取りやすくなります。
単位の設定ミスにも注意します。データ内の数値が正しくても、想定した単位と異なれば、読み込んだときの大きさが変わります。
商品ごとに弱くなりやすい部分
形状によって、先に見るべき箇所があります。細い部分そのものだけでなく、その付け根を確認することが重要です。
| 商品・部位 | 主な確認点 |
|---|---|
| リングの腕 | 手のひら側・絞り込んだ箇所 |
| ピアスのポスト | 根元・モチーフとの角度 |
| チャームの穴 | 穴の周囲・端までの距離 |
| 石座や爪 | 根元・石留め後の形 |
| 丸カン接続部 | 引っ張られる方向・開口 |
| 透かし模様 | 細線の交点・長い直線部 |
石座は、石の寸法だけでなく留め作業ができる空間も必要です。穴は開いていればよいのではなく、通す部品と、その部品の端部が通過できるかまで見ます。
ポストや細い装飾を本体へ直接立てる場合、境目が鋭いと力が集中しやすくなります。見た目を変えすぎない範囲で、接続部の形を相談します。
鋳造と仕上げの工程を見込む
完成品は、CADデータの表面をそのまま保存したものではありません。造形、鋳造、湯口処理、研磨、組み立てなどの工程を経ます。後工程で触れる場所を設計段階から想定します。
- 造形できる形か確認する
- 鋳造時に金属が回る形か検討する
- 湯口の位置と切除後の処理を想定する
- 工具が入り、磨ける面か確認する
- 組み立てや石留めの作業空間を見る
- 完成後の使用強度を試作で確かめる
深く狭い溝は、データ上できれいでも均一に磨きにくいことがあります。鏡面にしたい場所と、造形の質感を残したい場所を分けて伝えると、仕上げの判断がしやすくなります。
ロストワックスの基本工程はロストワックス鋳造の解説も参考になります。
入稿前と試作後のチェック
データ完成を「修正できない最終状態」にする必要はありません。製作側の確認を受け、試作で実物を見て調整します。意匠を守る箇所と変更できる箇所を明示しましょう。
- 外形寸法と単位は正しいか
- 閉じた立体としてデータが成立しているか
- 最薄部、最細部、接続部を把握しているか
- 石や既製金具の寸法情報がそろっているか
- 裏面や見えない部分の意図が伝わるか
- 製造上の修正を相談できる状態か
試作後は、寸法だけでなく、重さ、たわみ、肌当たり、研磨後の模様を確認します。問題が出た場合は、全体を太くするのではなく、原因となる場所を特定して修正します。
まとめ
- ジュエリーの必要肉厚は素材、形状、使い方、仕上げで変わる
- CAD画面の拡大表示ではなく、実寸で最薄部を確認する
- 穴やポストは細部だけでなく、周囲と付け根を見る
- 鋳造、研磨、組み立てを見込み、試作で最終判断する
3Dデータが完成済みでも、製造面に不安があっても構いません。形式と完成イメージを添えて無料相談からお送りください。