グッズの初期費用は何個で回収できるか|損益分岐の考え方
「初期費用がかかると聞いたが、何個売れば元が取れるのか」
答えは「初期費用 ÷ 1個売れるごとに残る額」で出せます。端数は切り上げます。
金額は案件ごとに違います。そのため、ここでは計算の型と、判断を誤りやすい点を整理します。
費用を2つに分ける
まず、見積もりの項目を2種類に仕分けます。
| 種類 | 中身 | 数量が増えると |
|---|---|---|
| 初期費用(初回の原型・型製作費) | 原型製作、型 | 1個あたりは下がる |
| 1個ごとの費用 | 地金代、鋳造、仕上げ、メッキ、検品 | 1個あたりはほぼ変わらない |
この2つを混ぜて総額で見ると、判断できなくなります。見積もりを受け取ったら、まずこの2つに分かれているかを確認してください。
分け方はグッズの原価と上代の決め方でも扱っています。見積もり全体の考え方は料金の考え方にまとめています。
回収に必要な数を出す
計算は次の順番で進めます。
- 上代から、販売経路の手数料を引く
- 販売者が負担する梱包・送料などを引く
- 1個ごとの製作費を引く(残りが「1個あたりの回収額」)
- 初期費用を、1個あたりの回収額で割る
出てきた数を切り上げたものが、初期費用を販売分で回収できる個数です。これを超えて売れた分から、計算に含めた費用の範囲で利益が出ます。
- 広告費や人件費など、計算に含めていない費用があれば、そのぶん回収は遅れる
- 1個あたりの回収額がゼロ以下なら、この条件では何個売っても回収できない
- その場合は、上代・販売経路・仕様のどれかを見直す
見積もりをお出しするときは、この計算に使える形で内訳を分けてご提示します。
数量を変えて比べる
1つの数量だけで判断すると、損をすることがあります。
- 50個のとき:1個あたりの初期費用の負担が大きい
- 100個のとき:負担は半分になるが、在庫リスクは増える
- 200個のとき:さらに下がるが、売れ残ると回収できない
「1個あたりがいちばん安い数量」と「いちばん損をしにくい数量」は違います。前者は多いほど有利、後者は読める範囲に収まります。
当社では、数量を変えた場合の単価を並べてお出しします。100個以上を検討する場合は量産のご案内も参考にしてください。
先に払う製作代金の回収は別に考える
上の計算は、売れた分で初期費用を回収する「損益」の見方です。実際の支払いは、売れ残る分も含めた発注数量全体にかかります。
| 見方 | 計算 |
|---|---|
| 初期費用の回収 | 初期費用 ÷ 1個あたりの回収額 |
| 支払った代金全体の回収 | (初期費用+発注数×1個ごとの製作費)÷ 1個あたりの手取り |
ここでの手取りは、上代から販売手数料と梱包・送料などを引いた額です。発注数を増やすと単価は下がっても、代金全体の回収に必要な販売数は増えるのが一般的です。
当社の初回取引は、発注時の全額前払いです。金額が大きい場合は2回に分割できるため、条件は品質と進め方で確認してください。
2回目は前提が変わる
初回に作った原型・型を使える場合、追加生産では条件が変わります。
- 初期費用を省ける場合がある(同じ仕様で、原型・型が使える状態の場合)
- 原型製作を省ける場合でも、追加生産の納期はその都度確認する
- 初回に回収しきれなかった額は消えず、次の回に引き継ぐ
まだ回収できていない額は「初期費用 −(初回からの累計販売数×1個あたりの回収額)」で出せます。回ごとに製作費が違う場合は、回ごとの回収額で足し合わせます。
つまり、初回で回収しきれなくても、追加生産まで含めれば成立するという設計ができます。初回を小ロットで小さく始める判断は、ここが根拠です。
原型は最終発注から6か月保管します。ゴム型は消耗品のため、劣化すると原型から作り直す費用が発生することがあります。
形状を変える場合も作り直しになります。追加生産の予定は最初にお伝えください。
回収を早めるためにできること
同じ企画でも、設計次第で回収に必要な数は変わります。
- 重量を落として1個ごとの費用を下げる
- 手作業の工程を減らす
- 上代を上げられる見せ方にする(刻印、仕上げ、同梱物)
- 追加生産でも同じ原型・型を使える設計にして、次回の初期費用を抑える
上代を上げるほうが、原価を削るより効くこともあります。仕上げや刻印で上代を見直す場合は、増える工程費用も含めて回収への影響を比較します。
判断を早くするために
回収の試算には、次の条件を使います。
- 上代(いくらで売るか)
- 販売経路(手数料や送料の負担がどれくらいか)
- 想定数量(読める範囲)
- 仕様(素材・大きさ・仕上げなど。初期費用と製作費の見積もり条件になる)
全部が決まっていなくても、未定の部分を仮置きして試算をお返しできます。仮置きした条件は、決まっている条件と分けてお示しします。
グッズ特有の進め方はグッズ・ノベルティ製作にまとめています。
よくある勘違い
回収の話でつまずきやすい点を挙げます。
| 勘違い | 実際 |
|---|---|
| 数量を増やせば必ず得 | 売れ残った分は回収できない |
| 初期費用は無駄 | 条件が合えば追加生産で再利用できる先行投資 |
| 追加生産で初期費用がなければ回収済み | 初回の未回収分は累計の販売で回収する |
| 単価だけ見れば比較できる | 初期費用の割り方で単価は変わる |
単価だけを他社と比べると、初期費用の扱いが違って比較になりません。内訳が分かれた見積もりで、同じ条件に揃えてから比べてください。
まとめ
- 費用は「初期費用(原型・型)」と「1個ごとの費用」に分けて考える
- 回収個数=初期費用 ÷ 1個あたりの回収額(端数は切り上げ)
- 先に払う代金全体の回収は、売れ残りも含めて別に計算する
- 追加生産では初期費用を省ける場合があるが、初回の未回収分は引き継ぐ
- 1個あたりが安い数量と、損をしにくい数量は一致しない