既存商品からバリエーションを展開する|型を活かして品数を増やす
品数を増やしたいけれど、新作をゼロから起こす体力はない。
小さなブランドでよくある悩みです。
このとき有効なのが、すでに手元にある商品をベースにした展開です。売れている1型を軸に、素材違いやサイズ違いを足していく考え方です。
この記事では、既存商品から派生させる方法と、「どこまで変えたら別物として作り直しになるのか」の線引きを整理します。
ゼロから作るより早くて安い理由
新作を1型起こすと、デザイン確定から原型製作までの工程が毎回必要になります。
一方、既存商品からの展開は、その工程の大部分を再利用できます。
- 形が決まっているので、デザインの検討期間が要らない
- 原型やデータが手元にあれば、そこから派生させられる
- すでに売れた実績があるため、外れにくい
かかるのは、変更した箇所を調整する分だけです。
原型が残っていない場合でも、現物から3Dスキャンでデータ化すれば同じ土俵に乗せられます。
変更の大きさで、必要な工程が変わる
ここが一番の判断ポイントです。
同じ「バリエーション」でも、変える箇所によって工程がまったく違います。
| 変更内容 | 必要になるもの |
|---|---|
| 素材だけ変える | 既存の型のまま。鋳造する地金を変えるだけ |
| 仕上げ・メッキだけ変える | 既存の型のまま。仕上げ工程の指定を変える |
| サイズを変える | データ上での寸法調整と、型の作り直し |
| 形の一部を変える | データ修正と、原型・型の作り直し |
上2つは型に手を入れないため、もっとも身軽な展開です。
同じシルバーの型から、K18版と真鍮版を出す、といった進め方ができます。
仕上げ違いも効果的です。工程が軽いわりに印象が大きく変わり、鏡面といぶしを別商品として並べられます。
在庫の観点でも有利です。型が同じなら、需要を見てから鋳造する素材を決められます。
先に完成品を大量に持たずに、品数だけを見せられるということです。
素材違いで展開するときの注意
素材を変えると、見た目以外も変わります。ここを読み違えると原価がずれます。
- 地金が変われば重量が変わり、原価も変わる
- 同じ形でも、素材によって強度や摩耗のしやすさが違う
- メッキののり方や色味が素材ごとに異なる
特に重量です。同じ形なら、比重の重い素材ほど地金コストが上がります。
シルバーで成立していた価格帯が、K18では成り立たないこともあります。
展開前に、素材ごとの重量差を試算しておくと安全です。
同じ形でも、素材が変われば別の商品として原価を組み直す必要があります。
サイズ展開は「増やしすぎない」
サイズ違いは需要がありますが、増やすほど在庫が分散します。
| 進め方 | 向いている場面 |
|---|---|
| 数サイズに絞って在庫を持つ | 定番として長く売る商品 |
| 受注ごとに製作する | 高単価・回転の遅い商品 |
まず狭く出して、動いたサイズを増やすのが堅実です。
初回から全サイズを揃えると、動かないサイズの地金が在庫として寝ます。
リングの場合、号数が変われば使う地金の量も変わります。大きい号数ほど重くなり、原価も上がります。
全号数を同じ売価にするか、号数で価格を変えるかは、展開前に決めておいてください。あとから変えると既存顧客への説明が難しくなります。
展開を前提に1型目を作るとラクになる
これから1型目を作る段階なら、あとの展開を見込んで設計しておくと後が楽です。
- 素材を変えても成立する厚み・強度にしておく
- 石を使う場合、入手しやすいサイズの石で設計する
- 刻印位置を、後から変えられる場所に置く
こうしておくと、2型目以降が「調整するだけ」で済みます。
追加生産で費用構造がどう変わるかは追加生産の基礎で解説しています。
まとめ
- 既存商品からの展開は、デザインと原型の工程を再利用できるぶん早くて安い
- 素材違い・仕上げ違いは型に手を入れず展開できる、もっとも身軽な方法
- サイズ変更や形の一部変更は、データ修正と型の作り直しが必要になる
- 素材を変えると重量と原価が変わるため、価格が成立するか先に確認する
- サイズ展開は狭く始めて、動いたものを足していくほうが在庫が安全
「この商品で素材違いを出したい」という段階でも構いません。現物か3Dデータをお持ちであれば、どこまで型を流用できるかを見てご提案します。