部分メッキでバイカラーのアクセサリーを作る|境界と指定方法
2色のアクセサリーは、別々の金属をつなげなくても作れます。形は1つのまま、一部分だけに別の色のメッキをかける「部分メッキ」を使います。
色の組み合わせは「地金の色×メッキの色」と「2色のメッキ」の2通りです。仕上がりを大きく左右するのは、色そのものより2色の境界をどこに置くかです。
溝や段差で区切ったデザインは、境界の線が揃いやすくなります。一方で、平らな面を細かく塗り分けたい場合は、デザインを固める前に相談しておくと安心です。
部分メッキでできること
部分メッキでは一般に、メッキをかけない部分を保護し、残りだけにメッキをかけます。保護は、その部分にメッキ液が付かないようにするための処理です。
具体的な保護の方法は、形状や加工する範囲によって異なります。呼び方も「さしメッキ」「コンビメッキ」など、事業者によって違います。
当社は部分メッキに対応しており、真鍮製品にもメッキをかけられます。
- 向いている表現:リングの外側と内側で色を変える、石座(石を留める台)だけを白くする、枠と中央で色を分ける
- 相談が必要な表現:細い線や小さな文字の内側だけを塗る、平らな面に入り組んだ模様を描く
- 部分メッキでは表現しにくいもの:ぼかしのように色が少しずつ変わる表現、写真のように細かい柄
メッキの種類ごとの色味は、ジュエリーのメッキ種類と色の考え方で比べられます。
色の組み合わせ方
地金の色を片方の色として使うか、2色ともメッキで出すかで、工程の数と見え方が変わります。代表的な組み合わせを表にしました。
| 組み合わせ | 見え方 | 企画時の注意 |
|---|---|---|
| K18イエローゴールドの地色×ロジウム | 黄色と白の落ち着いた対比 | 地色の部分は研磨の状態がそのまま見える |
| シルバー925の地色×K18メッキ | 銀に金の差し色が入る | 銀の部分は使ううちに黒ずみやすい |
| 真鍮×2色メッキ | 地金を見せず、2色ともメッキの色 | 色ごとにメッキの工程が必要で、手間が増える |
| ブラックロジウム・ルテニウム×明るい色 | コントラストが強く、模様が見やすい | 暗い色は擦れた跡が目立ちやすい |
| イエローゴールド×ピンクゴールド | 近い色どうしで穏やかな印象 | 照明によっては差が分かりにくい |
K18は金の割合を示す品位で、混ぜる金属によってイエロー・ピンクなど色が変わります。地色を片方の色に使うときは、「K18イエロー」のように色まで指定するのが確実です。素材の特徴はK18の素材ページで確認できます。
真鍮の地色を見せる設計は、空気や汗で色が変わっていく前提になります。そのため、真鍮では全体をメッキで覆う2色構成が選ばれやすくなります。
色の差が小さいほど、境界のわずかな揺らぎは目立ちません。反対に、黒×金のようなはっきりした対比では、境界の精度がそのまま見た目に出ます。
境界の作り方で仕上がりが変わる
部分メッキでは、仕様に応じて個別の保護や境界の確認などに手間がかかります。当社で採用する具体的な方法は、形状と加工範囲を確認してご案内します。
平らな面に線を引くように塗り分けると、わずかなにじみや揺らぎが出やすくなります。溝や段差があれば、塗り分けの線を形に沿わせられるため位置が揃います。
境界を形で作っておくことが、個体差を小さくする近道です。
| 境界の種類 | 仕上がりの安定 | 注意点 |
|---|---|---|
| 溝(彫り込んだ線)で区切る | 安定しやすい | 溝の幅は原型の段階で確保する |
| 段差(面の高さの違い)で区切る | 安定しやすい | 段差が浅いと区切りとして働きにくい |
| 出っ張った面の上だけを塗る | 比較的安定 | 物に当たりやすく、擦れが早い |
| 平らな面の直線・曲線 | 揺らぎが出やすい | 数が多いと個体差が目立つ |
| 細い線・小さな文字の内側 | 要相談 | 範囲を広げるか、別の表現を考える |
溝の幅や段差の高さの適正は、アイテムの大きさや素材によって変わります。3D CADで設計する場合は、原型を作る前に境界の形を相談してください。
塗り分けが細かすぎるときは、次のような代わりの方法があります。
- 塗り分けたい範囲を広げて、境界を溝の位置に移す
- シルバーなら、凹みに黒を残す「いぶし仕上げ」で模様を出す
- 色は1色のまま、鏡面とマットの質感の違いでツートーンに見せる
質感の違いの出し方は、ジュエリーの表面仕上げ比較が参考になります。
メッキする範囲の指定図の描き方
指定図は、どこを何色にするかを工場と共有するための図です。手描きでも、CAD画面のキャプチャに色を塗ったものでも構いません。
- 正面・側面・裏面の3方向の図を用意する
- 色ごとに塗り分け、凡例に「A=K18メッキ」のようにメッキの種類を書く
- 境界がどの溝や段差に沿うのかを矢印で示す
- 側面・裏面・リングの内側など、見えにくい面の色を書く
- 「ずれてはいけない箇所」と「多少の差は許容できる箇所」を分けて書く
ペンダントトップを例にした記入例です。
| 部位 | 指定 | 補足 |
|---|---|---|
| 外枠の表面と側面 | K18メッキ | 裏面まで回り込ませる |
| 中央の円形の面 | ロジウム | 外枠との間の溝を境界にする |
| 裏面の刻印部分 | K18メッキ | 刻印の凹みも同じ色 |
よくある失敗は、写真を丸で囲むだけで境界の位置が読み取れないケースです。「ゴールド」とだけ書いて、メッキの種類が決まっていないこともよくあります。
中でも裏面と内側の指定は抜けやすい項目です。指定図は発注仕様シートに添えると、確認のやり取りが減ります。
費用と数量の考え方(1個ずつの工程)
ゴム型を使うと、鋳造は複数個をまとめて行えます。ただし、メッキは1個ずつの作業です。部分メッキでは、仕様に応じて保護や境界確認などの手間も加わります。
そのため、部分メッキの単価は数量が増えても下がりにくい傾向があります。型などの初期費用は個数で割れても、手作業の時間は個数に比例して増えるためです。
仕様ごとの手間の違いは、一般的な傾向として次のとおりです。
| 仕様 | 1個あたりの手間(目安) | 向く場面 |
|---|---|---|
| 全面メッキ1色 | 少ない | 数量の多い定番品 |
| 地金色×部分メッキ | 中程度 | 石座だけ白くするなどの差し色 |
| 2色メッキ | 多い | 地金を見せたくない真鍮製品 |
ただし、境界の長さや入り組み方、保護する箇所の数、下地処理や確認の工程によって、この順番は逆転することがあります。細かい塗り分けの部分メッキが、単純な2色メッキより手間になる場合もあります。
仕様を比べるときは、同じ指定図をもとに見積もりを揃えると判断しやすくなります。数量が多い企画では、塗り分ける場所を1か所に絞るだけでも単価が変わります。工程が増えるぶん、納期に影響することもあります。
数量を変えた見積もりを比べると、部分メッキの単価がどれだけ動くかが見えます。価格の決まり方は料金の考え方で説明しています。
試作で色と境界を確かめる
メッキの色は、下地の金属や表面の仕上げによって見え方が変わります。色見本だけで決めず、実物の試作で確かめると安心です。
- 色:自然光と店内の照明の両方で、2色の差が狙いどおりか
- 境界:にじみや揺らぎが、決めた基準の範囲に収まっているか
- 回り込み:側面・裏面・内側が指定どおりか
- 擦れやすい位置:肌や物に当たる面に、はがれると目立つ色が来ていないか
- 個体差:量産で許容する差の基準を、試作品を見本にして決める
「許容できる範囲」は、言葉だけでは人によって受け取り方が変わります。境界の合否は、次の条件を揃えてから判断します。
- 基準にする溝や段差の位置
- 確認する面(表面だけか、側面・裏面も含むか)
- 見る距離、照明、ルーペなどで拡大するかどうか
条件を決めたうえで、どこまでの差を許すかは試作品を見ながら合意します。合意した試作品を見本にすると、量産時の判断がぶれにくくなります。進め方は品質と進め方で説明しています。
メッキは使ううちに擦れて薄くなり、部分メッキも同じです。再メッキできるかどうかと必要な工程は、摩耗の程度、下地の状態、石や部品の有無によって変わります。
古い皮膜の処理や再研磨が必要になる場合もあります。そのため、当たりやすい面に境界を置かない設計が効きます。
長く使うための設計とケアは、メッキの剥がれ対策と寿命の考え方にまとめています。
まとめ
- 部分メッキは「地金色×メッキ色」か「2色メッキ」でバイカラーを作る
- 仕上がりを左右するのは、色よりも境界の作り方
- 溝や段差で区切ると線が揃いやすく、平らな面の細かい塗り分けは相談が必要
- 指定図には3方向の図、メッキの種類、境界、裏面・内側の色まで書き、境界の合否基準は試作で合意する
- メッキは1個ずつの作業で、仕様に応じた保護や境界確認などの手間も加わるため、数量が増えても単価は下がりにくい傾向がある
境界の位置が決まっていない段階でも、デザイン画をもとに区切り方から一緒に検討できます。よろしければ無料相談からお送りください。