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ジュエリーのトレンドデザインを仕様に落とす|大ぶり・非対称・重ね付け

よく見かける流行のデザインを自社で作るとき、失敗の原因は形より仕様にあります。とくに差が出るのは、重さ、パーツの接続部、服や髪への引っかかり、仕上げ、サイズ展開の5つです。

画像では魅力的に見える形でも、着けると重かったり、傾いたり、すぐ曲がったりします。傾向ごとに起こりやすい問題はある程度予想できます。デザインを固める前に、検討する項目を洗い出しておきます。

そのうえで、数量を作る前の試作1個で重さ・傾き・引っかかりを確かめます。強度は、使い方と力のかかる箇所に合わせて、確認方法を別に決めておきます。

先に結論:流行は形でなく仕様で失敗する

流行のデザインは、SNSや参考画像を見て決めることが多いものです。ただ、画像には重さや裏側、着けたときの向きが写りません。

作る前に、次の5つを言葉にしておきます。

  • 重量:着けたときの負担。同じ形でも素材で変わる
  • 接続部:カン(パーツをつなぐ輪)や丸カンなど、力が集まる場所
  • 引っかかり:ニットや髪、マスクのひもに触れる突起
  • 仕上げ:面の広さや凹凸で、傷の目立ち方が変わる
  • サイズ展開:号数や長さを増やせる形かどうか

参考画像に写っていない裏側と重さを、依頼前に決めておくことが近道です。

参考画像は、ボリューム感や線の太さ、質感など、好みの要素を伝えるために使います。複製・改変をお受けするのは、依頼者が権利を持つもの、または権利者の許諾があるものに限ります。

似ていてよいか判断に迷うときは、弁理士・弁護士にご相談ください。

流行の形は入れ替わりが早いものです。定番の商品と組み合わせて展開を考えると、在庫の偏りを抑えられます。考え方はコレクションの組み立て方にまとめています。

傾向別に検討する項目

よく見かけるデザインの傾向ごとに、起こりやすい問題と検討する仕様をまとめました。

傾向 起こりやすい問題 仕様で検討すること
大ぶり・ボリューム 重い、耳たぶが下がる、傾く 裏抜き、重心、素材、金具
左右非対称 片側だけ傾く、左右の取り違え 左右の原型、表示、販売単位
重ね付け 隣と当たる、きつく感じる 幅、断面の形、石の位置
極細・華奢 曲がる、折れる、鋳造で欠ける 太さ、素材、力のかかる箇所
ボリュームチェーン 重い、髪が挟まる、留め具が外れる 留め具の強さ、リンクの隙間

チェーンには注意が必要です。喜平などの機械で編むチェーンは、鋳造では作れません。チェーン込みの製作や手配はご相談ください(仕様を確認してご案内します)。

ここからは、傾向ごとに検討の中身を見ていきます。

大ぶりは重さと重心

大ぶりのデザインは、大きさに応じて重くなります。同じ形でも、K18やプラチナ900はシルバー925より重くなります。真鍮はシルバー925よりやや軽めです。

重さを抑える方法は、主に次の3つです。

  • 裏抜き:見えない裏側をくり抜いて軽くする
  • 素材の変更:真鍮にメッキをかけて色を寄せる
  • 厚みの調整:正面から見た輪郭は変えずに薄くする

ただし、薄くしすぎると問題が出ます。鋳造で金属が行き渡らなかったり、使ううちに変形したりします。

ピアスの着け心地は、重さの合計だけでなく重心の位置でも大きく変わります。前に倒れるかどうかは、重心が耳たぶから前へ離れる度合い、ポストの位置、キャッチの支え方などで決まります。

そのため、正面だけでなく横からも、着けた状態で向きを確かめます。

仕上げにも影響があります。広い鏡面は小傷やへこみが目立ちます。マットやヘアラインなら目立ちにくくなります。

重さの考え方と対策はアクセサリーの重さと着け心地で詳しく説明しています。

非対称は左右の設計と表示

左右で鋳造する立体の形が異なる場合は、原則として左右それぞれに原型が必要です。共通のパーツを組み合わせて左右を作り分けられるかも、あわせて確認します。

左右で原型が分かれると、左右対称のデザインより初期費用が増えやすくなります。販売前に次のことを決めておきます。

決めること 検討の例
販売単位 片耳ずつ/左右セット
左右の見分け方 裏の小さな刻印、台紙の表記、個包装を分ける
着け方の案内 どちらの耳用か、向きがわかる写真

片側だけ重いと、左右で傾き方が変わります。左右のピアスはそれぞれの耳で支えるため、軽い側に重さを足しても傾きがそろうとは限りません。

左右それぞれの重量・重心・ポスト位置・金具を調整し、着けた状態で確かめます。重さを足すと、耳への負担が増えるだけになることもあります。

非対称のリングにも注意点があります。号数を変えると模様の比率が崩れることがあります。サイズ直しで模様がずれる場合もあります。

重ね付けは幅と干渉

重ね付けを前提にするリングは、1本ずつではなく、組み合わせた状態で設計します。よくある失敗は次のとおりです。

  • 幅の合計が広く、指の関節が曲げにくい
  • 幅広のリングは、同じ号数でもきつく感じやすい
  • 爪留めの爪が、隣のリングやニットに当たる
  • 平らな断面同士がこすれ、傷やメッキの剥がれが出る

対策として、断面を甲丸(外側が丸い形)にすると当たりがやわらぎます。石を覆輪留め(石のまわりを金属で囲む留め方)にすると、引っかかりにくくなります。

重ねる相手と同じ号数で試着してから、幅と号数を決めることが大切です。硬さの違う素材を重ねると柔らかい側に傷がつきやすいので、この点も案内に入れておきます。

華奢なデザインは強度

極細・華奢なデザインは、画像では繊細に見えます。ところが実物にすると、強度が足りないことがあります。必要な太さは素材・長さ・形で変わるため、一律の数字では決められません。

弱くなりやすい場所 起こること 代替案
細い部分と太い部分の境目 曲がる、折れる 境目をなだらかにつなぐ
長く細い腕 鋳造で欠ける、変形する 見えない方向に厚みを足す
小さな爪やカン 石が外れる、チェーンが抜ける 力のかかる箇所だけ太くする

メッキは強度を補うものではありません。研磨で表面が削られる分も見込んで、原型の段階で余裕を持たせます。

弱点の見つけ方は壊れにくいアクセサリーの設計にまとめています。細さを保つ工夫は製造が難しいデザインと代替案が参考になります。

仕様にまとめた記入例(大ぶりのピアス)

ここまでの検討を、依頼用の仕様にまとめた例です。数値は説明用の例で、実際の値はデザインに合わせて決めます。

項目 記入例
アイテム 大ぶりのスタッドピアス、片耳販売
寸法 縦約30mm・横約20mm(参考画像より一回り小さく)
素材 シルバー925、K18メッキ
重量 片耳の上限を決め、試作で実測して調整
裏側 裏抜きあり、ポストは重心に合わせて配置
接続部 揺れるパーツなし(一体の形)
仕上げ 表はマット、ふちだけ鏡面
サイズ展開 なし(1サイズ)
未確定事項 左右の形を分けるか、ふちの鏡面の幅

未確定の項目も「未確定」と書いて残すと、見積もりや試作で何を決めるかがはっきりします。項目をそろえるときは発注仕様シートが使えます。

試作で確かめること

仕様は、数量を作る前の試作1個で確かめます。図面で想定した重さと、実物の重さはずれることがあるためです。

  1. はかりで重量を測り、想定と比べる
  2. 実際に着ける場面を想定し、着ける時間を少しずつ延ばして耳や指の負担を確かめる
  3. ピアスは正面と横から見て、傾きと向きを確かめる
  4. ニットやタオルに触れさせ、引っかかりを確かめる
  5. 重ね付けは、実際に組み合わせる相手と着ける
  6. 左右の表示や個包装を、販売時の形で並べる
  7. 照明の下で、仕上げの傷の見え方を確かめる

痛みや違和感が出たら、そこで着用を中止します。着けた時間や場面などの条件と、結果をあわせて記録しておきます。

修正は数量を作る前に済ませると、型を作り直す手戻りが減ります。修正の回数によって、納期は前後します。

強度は確認方法を別に決める

試作を着けてみるだけでは、長く使ったときの強度まではわかりません。次の点を整理し、どこをどう確かめるかを製作元と決めておきます。

  • 想定する使い方:毎日着けるか、特別な日に着けるか
  • 力がかかる箇所:カン、爪、ポストの根元、細い腕など
  • 確認する内容:曲がり、石のゆるみ、接続部の開きなど

確認した内容を記録しておく方法は、サンプル確認チェックリストが参考になります。

まとめ

  • 流行のデザインは、重量・接続部・引っかかり・仕上げ・サイズ展開の5点で失敗しやすい
  • 大ぶりは裏抜きと重心、非対称は左右の原型と表示を先に決める
  • 重ね付けは組み合わせた状態で、幅・断面・石の位置を設計する
  • 華奢なデザインは、見えない方向の厚みと力のかかる箇所の太さで強度を補う
  • 試作1個で重さ・傾き・引っかかりを確かめ、強度の確認方法は別に決めてから数量を作る

参考画像と「気になっている点」を発注仕様シートにまとめてお送りいただければ、仕様を一緒に検討します。まずは無料相談からご連絡ください。

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